スウェーデンに家族と共に移住したエンジニアのブログ

娘の教育と妻のキャリアの為にスウェーデンへ移住。

海外企業へ転職する為の具体的かつ現実的な5つのステップ ②文化 後編

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社員と企業、企業と社会の関係性 退職金なんて無いぞ!

日本では退職金制度や社宅・住宅補助、家族手当等は多くの企業で一般的ですが、スウェーデンでは色々と事情が異なります。退職金は一切ありませんし、社宅も住宅補助もありません。会社までの交通費も出ません。ですが、企業年金はありますし、子ども手当は各自治体から出ます。

私個人の意見ですが、老後の生活は勤めていた企業に関わらず、国や自治体が安心して暮らせるよう保証するべきだと思います。企業や勤続年数の違いによって退職金の額が大きく変動するとなると、たとえ20代であっても転職する時に「俺の退職金はどれだけ減っちゃうのかなぁ」と、40年も先の自分を心配しなくてはなりません。それよりも20代の若者が”今”を考えられる世の中の方が良いと思いますし、1社目でうまくいかない人はその後の会社で報われるチャンスも出てきます。

少し表現が荒くなりますが、日本企業では一般的に”終身雇用と退職金を担保に、転勤や年功序列を受け入れる文化”にあると言って良いでしょう。転勤を命ぜられ、買ったばかりのマイホームを手放すのはよく聞く話です。これをスウェーデンでやったら裁判沙汰となります。

スウェーデン人は会社に対しての依存度が日本ほど高くありませんので、自分の思う通りのキャリアが描けなかったり、新たにチャレンジしたいことが見つかればどんどん転職していく文化にあります。特に20代では、2-3年で会社を変えていくべきだという風潮すらあり、30代以降でも5-10年同じ会社に勤めたら会社を変えるのが一般的です。私が今の会社に入社した時に一緒にスタートしたのは50歳の人でした。35歳の私とやっていることは同じなので、15個上の”同期”の彼とは給料はほとんど変わらないはずです。そしてこれは別に恥ずかしいことでもありません。

ご近所さん(薬品メーカー・理系職・40代半ば)とこの前立ち話をしていたら、「俺、パンを焼いたりお菓子を作るのが好きでさ、仕事が終わってから学校に通ってるんだよ。今は趣味としてだけど、近々そういう飲食店で働きたいんだよなぁ」なんて言っていました。す、すげーな・・・。

私も、一つの会社に縛られることなく、世界中にある何千何万とある会社の中で、一社でも多く経験してみたいと思います。もちろん、今の会社で居心地がよければ定年までいることも充分考えられますし、そういった人だってスウェーデンにも多く存在します。これこそが、本当の意味で、日本国憲法22条にもある「職業選択の自由」なんだと思います。9条だけでなく、こっちも議論するべきかと・・・。

日本の企業は、本来行政が負担するべき領域にまで深く入り込み、給料以外のところでも従業員の生活を保証する役割を担ってしまっています。それが故に、終身雇用と年功序列となっているのではないでしょうか。

会社とは、利益を追求する集団であり、社員は会社に対して、労働という価値を提供し賃金という報酬を得る契約を結んでいます。しかし、そこに年功序列の概念が入ってくると、そう単純にいかなくなります。本来は、労働に対して「誰がやるか」とか「年齢」は関係ないはずで、その職務さえ全うできる能力さえあれば何歳であってもいいのです。サッカーや野球選手と同じですよね。ということは、社員一人一人が会社の利益に貢献するプロでなければならず、業務内容や勤務時間は契約書で細かく合意されていなければなりません。

決められた時間及び業務内容に対して価値を提供すれば良いので、逆に言えば、勤務時間外は会社の管轄外となり、プライベートな時間なので会社が関与することは越権行為になるとスウェーデン社会では考えられています。ですから社宅や住宅補助など個人の生活に関わることに会社は関与してきません。

でも会社から遠いところに住むと交通費がかかりますよねぇ・・・。私は車で3分のところに住んでいるので、交通費はほとんどかかりません。徒歩15分なので歩けよって話なのですが。でも子どもの送り迎えもあるしなー・・・。家も高いんだよなぁ。。。おっと、話を元に戻しましょう。

 

飲酒運転をしても、不倫がバレてもクビにならない!?

勤務時間外で何をしても自由です。副業もOKですし、会社の名誉を傷つけたり、職務に影響が出ない限りクビになることはないでしょう。飲酒運転で捕まってもクビにはなりません。何故なら、それはプライベートでの出来事であり、行政処分を受けているのでそれで十分なのです。警察もわざわざ会社に通知したりしません。この点は日本とだいぶ異なるので腑に落ちないかもしれません。スウェーデンでも飲酒運転はもちろん違法ですが、スウェーデン人に日本では飲酒運転は即刻クビだと話すと、彼らは「じゃあ駐車違反でもクビになるの?」と首をかしげます。勤務時間外は会社と関係ないのになんでよ?と彼らは思うそうです。

確か昨年、某局のお天気お姉さんの不倫がバレて番組降板の後に、自主退社(事実上のクビ)となっていましたね。スウェーデン人にこの話をしたところ、まず「なんで?」となる。そして「別に天気予報がちゃんとできればそれでいいじゃん。まぁ不倫に限らず、魔がさして倫理や法律に背いてしまうことぐらい誰だってあるじゃないか。日本人はみんな完璧で潔白なのか!?」と言っていました。

なので、仮にベッキーがスウェーデンのタレントだったら今頃テレビに出ていることでしょう。ですが、視聴率が下がり、それが明らかにベッキーの影響となれば、それを理由に番組を降板することもありえるかもしれません。少なくとも、記者会見を開き、涙ながらに謝罪をするという場面はスウェーデンではありえません。そもそも謝る相手が間違っています。「この度は、皆様に多大なる迷惑をおかけし・・・」って、皆様って誰だ?少なくとも私は全く迷惑を被っていません。むしろベッキーにも恋心があって安心しました。

いや、不倫はダメだと思いますよ、ダメなんですけど、でも、見せしめに合った挙句、仕事が全部なくなって社会から抹殺されるのはやり過ぎだと思います。謝るべきは不倫相手の配偶者であり、その家族であり、その当事者間で解決ができれば世間には全く関係のない話だと思いますし、ましてや仕事がなくなるというのはおかしいと思います。

また、成人した子供が逮捕され、親が代わりに謝罪会見を開くということもスウェーデンではありえません。成人したら本人の責任です。あの女優さんも誰に謝っているんだか全く訳が分かりません。

また、日本では誰かが何かの容疑で逮捕されると実名で報道されます。まだ起訴されるかも分からないし、裁判で有罪となる前の段階で、あたかも犯人であるように実名で報道されてしまい、後に冤罪や無罪となったとしても社会から抹殺されてしまいます。疑わしきは罰せず、とか、推定無罪と言いながらも、逮捕の段階で既に終了となってしまいます。冤罪だったら非常にマズイです。

スウェーデンでは、スーパースターや有名政治家でなければ逮捕と同時に実名での報道はありません。たとえ間違いを犯した人でも、やり直すチャンスがある社会となっています。

 

死刑制度

さて、いよいよ「文化」後編の最後です。ここは日本人が最も理解しにくいところだと思います。

まずは世界地図をご覧ください。

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赤くなっているところは死刑が採用されている国です。ご覧の通り、欧州ではベラルーシを除いて死刑は廃止となっています。EUに加盟する条件の一つに、死刑廃止を掲げているぐらいです。スウェーデンでは法律ではなく、憲法で死刑を禁じています。最後に処刑されたのは100年以上前のことです。

スウェーデン人に、日本に死刑制度があるということ、また、国民の8割が賛成していることを伝えると、とんでもなく驚きます。「え!あの日本が!?先進国でしょ!?」と言う人が多いです。確かに、世界地図の赤い国々を見ていると、何だか・・・う~ん・・・複雑な心境です。

先進国では珍しいと言える死刑制度について、日本人は議論をするべきだと思います。欧州では死刑なんて存在しないのが当たり前なのです。今後、海外へ移住とまではならなくとも、日本にいてもグローバル化が加速し、こういった考え方の人たちと共に生きていかねばならない時代となってきています。彼らが死刑についてどんな考え方を持っているのか、それに対して日本人としてどういう意見を持っているのか、どちらが良い、悪いではなく、しっかりと意思を持つことが大切だと思います。

私自身、よくわかりません。賛成でも反対でもありません。自分の家族が凶悪犯罪にあった時に平静を保つ自信はないですし、犯人に対して極刑を望むかもしれません。ですが、欧州人が言うように、犯人を殺したからと言って被害者の傷が癒える訳ではないという考え方も理解できます。

人を殺したくて産まれてくる人なんて一人もいません。育つ環境に恵まれなかったり、社会が適切な保護をできなかったりと、様々な要因が複雑に絡んだ結果、殺人事件は起こるのだと思います。であれば、その犯人の存在を無くすことで、再発は防止できるのでしょうか。その犯人が育った環境や、社会が完璧だったのであればそれでも良いかもしれませんが、そんなことはないでしょう。再発防止を考えるのであれば、犯人一人に責任を押し付けるのではなく、社会全体で責任を負うべきなのかもしれません。

日本でスウェーデン人と数年間仲良くし、スウェーデンに来て半年が経過したところで、私も少しずつ死刑制度に対する見方が変わってきました。

 

まとめ

社会インフラの充実、個人の自由度、社員と企業や企業と社会の関係、はたまた死刑制度に至るまで、日本人として生まれ育った人たちにとって当たり前のことが、外国だと全然違います。

特に死刑制度。大きな過ちを犯せば死ぬ可能性がある国と、それでも社会が許そうとする国があるのが事実です。後者の国々からは、残念ながら日本は白い目で見られています。

右に倣えで死刑廃止にするのはおかしいと思います。繰り返しになりますが、国民全体で議論する必要があると思いますし、少なくとも死刑廃止国の人と接点がある人ならば、日本の死刑制度について自分の意見を持っておくべきかと思います。

 

そして、この死刑に対する考え方は、大げさかもしれませんが、会社でも似たようなところがあると感じはじめています。日本企業では、「何かあったらいけないからアレもしようコレもしよう」と言って、やりたいことがなかなか進まないことが多くありました。みんなが失敗を恐れている印象でした。スウェーデンではこの点が大きく違います。まだ半年ですが、私が上に提案したことで、却下されたことは今までありません。その後、うまくいかず、結果的に会社の金を使っただけとなっても咎められることはありません。反省会や再発防止の検討もありません。ですが、逆にその方が勝手に深く反省しますし、勝手に現実的な再発防止策を考えます。

 

スウェーデン社会は寛容で、間違いは誰でも犯すのが前提の考え方となっています。逮捕後の実名報道はありません。

スウェーデンではワイドショーでスキャンダルを散々取り上げ、国民総出でターゲットを再起不能まで叩くことはしません。

会社でも同じで、失敗をしても、非現実的な再発防止策を考えさせられるようなことはありません。

(例:遅刻をした→寝坊したから→目覚し時計が壊れていたから→目覚し時計を増やす!みたいなヤツ)

 

瞳の色や髪の毛、肌の色が違ったり、車が右ハンドルとか左ハンドルの違いは簡単に分かりますし、すぐに対処ができることだと思います。ただ、見えない部分での考え方の相違が多くあることをあらかじめ認識しておくことが大切です。

以前も書いた通り、言葉を習得するよりも大切ですし、大変です。

私も日本にいた頃と比べて、たいぶ寛容になったと思います。

 

 

さて、次回はCV=職務経歴書についてお伝えします。

言葉や文化を理解するよりかは遥かに簡単で、手ごろに始められます。転職をする気がなくても、まずは自分の職務経歴書を書いてみてはいかがでしょうか。書いてみると面白いものです。


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