スウェーデンに家族と共に移住したエンジニアのブログ

娘の教育と妻のキャリアの為にスウェーデンへ移住。

スウェーデン人の労働生産性は本当に高いのか

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スウェーデン人の労働生産性が高いという記事を時々見かけますが、実際のところどうなのでしょうか。スウェーデン企業に8ヶ月勤めてみて感じたことを書いてみます。

 

“労働生産性が高い”と聞くと、黙々と集中して一気に仕事を片付けるイメージですが、実際はそんなことはありません。雑談だってしますし、ネットサーフィンもします。スウェーデン人はそもそも、一日8時間もぶっ続けで集中するのは不可能だと考えています。

 

ちなみに、私の会社では、一日2回のFIKA(フィーカ)というものがあります。これはスウェーデンの習慣で、みんなで集まってお茶をしようといった感じです。私の会社ではわざわざ就業規則にも書いてあるぐらいの一大イベントです。時間になるとデスクから一斉に立ち上がり、徒歩3分ほどの社員食堂までぞろぞろと移動してみんなで座ってコーヒーを飲みます。↑の写真がまさにFIKAの真っ最中。そして15分経つとデスクに戻り、また一斉に仕事再開となります。

 

このFIKAがちょうど良いタイミングで来るんです。私は、だいたい7:00過ぎに出社しますが、2時間後の9:15に1回目のFIKA。お昼休憩が終わる12:15から2時間後の14:15に2回目のFIKA。そこから2時間働いて16時過ぎに帰宅します。なので2時間に一回休んでいることになり、これがちょうど伸びをしたくなる頃なんです。このリズムに合わせて集中できるように心がけています。ただ、時々このリズムが崩れて、雑談をしてみたりネットサーフィンをしてみたりということだってあります。もちろん個人差はありますが、人間とはそういう生き物なので仕方がないというのがスウェーデン人が大前提としているところです。

 

つまり、スウェーデンという国や社会というのは、「人間が連続して集中して何かをできるのはせいぜい2時間ぐらいで、休憩を含めて一日8時間が限界」と考えていて、従業員は一定の間隔で休憩を取ることが権利として法律で定められています。これはトラックドライバーもオフィスワーカーも同じです。

 

もちろん忙しさには波があるので、FIKAをすっ飛ばしたり、瞬間的に残業をすることはあります。ですが、その後しっかりと休暇を取ってリフレッシュをします。少々大げさですが、スポーツ選手が試合に向けてコンディションを調整するのと同じで、プロ野球で完投したピッチャーが翌日また投げても良い球は投げられないですし、肩を壊して最悪の場合、再起不能になるかもしれないですよね。

 

日本では、人間は常に休まず頑張らないといけないという前提があるように感じます。このような雰囲気ですと、みんなが帰らないと自分も帰れないとか、集中できない時も頑張っているフリをしないといけなかったりで、常にプレッシャーにさらされてしまい神経が擦り減ってしまいます。現に私はそんなにタフではないので、昔は自分でも信じられないようなミスを繰り返した時期があり、明らかに自分自身のコントロールを失っていました。

 

スウェーデンでは、人間とは必ず集中力が途絶えてしまうし、ミスも犯す生き物であることが大前提であり、集中できる環境を整え、ミスを極力減らすことが大切だと考えています。その為には仕事中であってもリラックスし、心を落ち着かせる必要があるということです。また、他人の間違いをあまり細かく指摘しません。資料での誤字脱字等にいちいち文句を言ってくる人はいません。致命的なミスの場合は本人が傷つかないようにやんわりと教えてくれます。

 

 

というわけで、「労働生産性が高い=サボることもなく黙々と集中して働く」というのは違います。

 

現実的な目標に向かって自分自身をコントロールし、集中力の高め方を知っていることが重要なんだと思います。例えば好きな音楽を聴くとか、いろいろあると思います。同僚はみんな仕事中にヘッドホンをしています。業界にもよると思いますが、日本だと仕事中にヘッドホンなんてできないですよね。とにかく、人間は集中できない時はできないんです。そういう時は散歩するなり、帰ってリラックスして、翌日またやればよいのです。またこうした人間の基本特性を互いに認め合う風土が大切です。常に誰かに監視されているプレッシャーを受けていては良いパフォーマンスは出せません。自由に自分のやり方で、自分のタイミングでやるのがスウェーデン流といったところでしょうか。

 

単に労働生産性や国民一人当たりのGDPといった数値で比較するのではなく、その数値が形成される過程にも注目をするべきだと思います。

 

まだ8ヶ月(立派な取材期間だとも思いますが)ですし、この先私の感じ方も変わってくると思うので都度アップデートします。

 

↓同僚の彼とはしょっちゅう雑談を楽しんでしますw

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