スウェーデンに家族と共に移住したエンジニアのブログ

娘の教育と妻のキャリアの為にスウェーデンへ移住。

スウェーデンへの移住を検討されている方々へ

ストックホルムへ家族で移住し、現地企業 Öhlins Racing ABでエンジニアとして働く傍ら、スウェーデン企業への転職・移住サポート事業LIV INNOVATIONの代表を務める1981年生まれ、二児の父親です。

 

現在、1歳になったばかりの次女の育児休暇中(7〜10月)。

 

f:id:sverigeyoshi:20180710183109j:image

 

昨今、スウェーデンに限らずEUへの移住を漠然とでも検討している方々から様々な問い合わせをいただいております。

 

ですので、今回はスウェーデン及びEUへの移住を例に、以下のステップで書いてみました。

 

①最終学歴

 

②日本では"学校歴"、スウェーデンでは学歴が重要

 

③労働許可とは具体的に何なのか

 

④移住先のお国事情から需要と供給を考える

 

⑤スウェーデン企業が社員を募集するには

 

⑥その他のVISA

 

⑦シューカツは全く通用しない

 

の基本的なところを説明します。

 

けっこう長いです。

ですが、マジで移住を考えている方にはどれも必要な情報、考え方だと思います。

 

①最終学歴

外国に居住し、社会保障を受けるにはその国からVISAというものを発行してもらわないといけません。VISAと言っても様々なものが存在するのですが、日本人の場合ですとスウェーデンに限らず外国へ移住するにはその国の人と国際結婚をするか、または現地の会社から

 

「この人がどうしても必要なんです」

 

と言ってもらい、労働許可というものをもらわないといけません。この労働許可が最上位に位置し、その次に居住許可が降ります。

 

労働許可=work permit=arbetstillstånd

居住許可=residence permit=uppehållstillstånd

 

この全ての原点となる労働許可を日本人が得るのはそう簡単ではありません。

 

ですが例えば、世界的に有名な日本の自動車産業や家電業界の研究開発であったり品質保証領域のエンジニアなんかですと可能性はぐっと高まります。当然英語が話せないと話になりません。

 

特にスウェーデンでは慢性的にエンジニアが不足しており、日本の上記産業に従事し、

 

「エンジニア x 英語」

 

を持っている人であれば、超が付くほど労働許可を得やすいでしょう。

 

もっと平たく言えば、別にエンジニアでなくとも

 

「理系 x 英語」

 

でも良いでしょう。

それなりの学歴と職務経験が必要となりますが。

 

但し、専門職と言えど、例えば医者や弁護士は極めて困難だと思います。

 

医師免許は国によって異なりますから、詳しいことは分かりませんが医師免許は運転免許のようにササッと書き換えと言うわけにはいかないでしょう。

国によって医療事情が異なるのは当たり前で、ゼロからではないでしょうが、スウェーデンならスウェーデンの医療を学ばないといけません。

大学等の研究機関で研究職として従事されるのであればまた別の話ですが。

 

文化系にも専門職は沢山ありますが、例えば弁護士はおそらくゼロからやり直しです。日本の法学部の学位はほとんど役に立たないでしょう。そもそも国をまたげば法律が違いますからね。

スウェーデンに限らずEUには死刑制度すらないですしね。

 


とにかく、配偶者がスウェーデン人でなければスウェーデン人への雇用機会を奪ってでも日本人にVISA(正しくは労働許可)を出させるだけの理由が必要なんです。

 

この時、まずは最終学歴が一つ目のフィルターとなります。

 

もちろん、世の中様々な職種があるものの、サラリーマンとして労働許可を得るには、大学を出ていることは最低条件と言えるでしょう。

 

 

 

②日本では"学校歴"、スウェーデンでは学歴が重要

スウェーデンで「エンジニア」を名乗るには大卒だけでなく博士課程前期、つまり修士号=マスターの学位があることを意味します。

(英語が話せることもエンジニアの定義の一つ)

 

私はマスターを持っていない珍しい人です。

(学歴コンプレックス!うぉーっ!笑笑)

 

ちなみに、スウェーデンの人は早稲田も慶応も上智も知らないですし、東大や京大でさえ、

 

「東京と京都にありそう。多分良い大学なんじゃないの?ワ…ワセ…ってのは知らん。ケーオー?KO?ノックアウト?」

(実際にあった会話)

 

といった感じです。

 

私、日大出身ですが、こちらでは早慶上智と何ら変わりません。

 

むしろ日本とはJapanて意味だと言うと、

 

「じゃその日本大学って一番スゲーんじゃねーの?」

 

なんて真顔で言われます笑笑

 

冗談はさておき、重要なのは何をどのように学んだかです。スウェーデンには偏差値というものがなく、受験も塾も存在しません。

 

私の場合は材料力学系の分野でホンダと共同研究をやっていたのでこの手の話はしやすいです。

 

労働許可の手続きに限らず、スウェーデンで大学の話になった時には

 

「コイツ馬鹿だなぁ〜」

 

と思われない話し方、内容の方が重要なのです。偏差値とかどーだっていいんです。

 

ちなみに、スウェーデンやドイツでは大卒であれば英語はそれなりに話せるということでもあります。

 

これが真の意味での高等教育なわけです。

 

日本では、偏差値が高くスゲーと言われている大学を出ても、英語が話せないとなると欧州では

 

「え?それって大学なの?」

(ちょっと大袈裟だが実際言われたことがある)

 

と思われちゃいますよー。

 

 

 

③労働許可とは具体的に何なのか

スウェーデンが我々日本人に期待しているのは単純労働ではなくて高度な専門領域です。

また、高度な専門領域でないとそれなりの給与はもらえません。ですので、仮に所帯持ちとなるとこのパターンでない限り家族を養うのは事実上不可能となるでしょう。

単身者であっても生活水準を思いっきり下げるしかありません。

 

スウェーデンでは専業主婦が2%しかいないと言われています。夫婦揃って職が得られれば最高ですが、なかなかそうはいきません。

配偶者が職を得るまでに食いつなげるだけの十分な収入を得るにはやはり高度な専門職でないと現実的ではありません。

(数年後に配偶者が職を得てダブルインカムになるとホクホクになっちゃう)

 

そもそも労働許可とは、雇い主となるスウェーデン企業と、雇われる個人が揃ってスウェーデンという国に対して

 

会社「この人は日本人で、今までスウェーデンには税金払って来なかったけど、この人はスウェーデン社会に貢献してくれるのでこの人とその家族にも社会保障を与えてやって下さいな

 

個人「私今までこういうことやってきたッス!スウェーデンに貢献したいんです!社会保障してくれっす!」

 

とお願いをするものなんですね。

 

申請をしてから早くても数ヶ月、長いと半年以上かかることもあります。

(配偶者VISAは数年かかると聞いてます)

 

外国に移住するには、この基本的な部分を理解する必要があります。

 

スウェーデンの移民庁の職員になった気分で考えてみるといいかもしれません。

 

分かりやすく言えば、日本からは税金をいっぱい払ってくれそうな人が欲しいんです。

 

というわけで、日本国内で職探しをするのとは根本的に異なるわけです。

 

 

 

④移住先のお国事情から需要と供給を考える

前述のように日本の自動車業界の理系で、英語が堪能であればEU域内への移住はかなり現実的です。

但し自動車産業が栄えている国に限られます。ドイツ、フランス、イタリア、イギリス、オーストリア、スウェーデンあたりが現実的でしょう。また、これらの中でもエンジニアが慢性的に不足している国だとなお可能性が上がります。

従って、ドイツはどーなのかなーと思います。八千万人の人口を抱えるEU最大の国ですし、自動車産業は世界トップクラスに栄えております。

きっとエンジニアも数多く存在するのでは。そこで競争するのってちょっと大変そう…!?

私はドイツで働いたことはありませんが、ドイツ企業の日本支社=BMW Japanで働き、かつ何度もドイツへ出張した経験から少しそう感じます。

 

また、自動車業界を電機業界に置き換えても↑は成り立ちます。履歴書にSonyとかPanasonicと書いてあれば引く手数多でしょう。スウェーデンにだって白物家電メーカーはいくつかありますし。

 

IT系はどうなんでしょう。私、全く分かりませんが上記のようにMade in Japanが世界的に通用する分野であれば問題はないと思いますが。確かに手に職系のお仕事でしょうし、世界中どこでも食っていけそうですが、業界、産業としての実績が国レベルで有名でない限り、その他の国と比較して優位性は保てないのでは!?と思います。

(これは完全なる偏見なのでテキトーに流して下さい)

 

自動車業界や電機業界であればトヨタやホンダ、SonyやPanasonicなどの世界的にインパクトのある多数のブランド企業を排出してきたので、スウェーデン側からしてもイメージがしやすいと思います。

 

先程より「スウェーデンでは慢性的にエンジニアが不足している」と書いていますが、具体的にどういうことなのかを説明します。

 

例えばストックホルムにある、スウェーデン王立工科大の、機械工学科を学ぶ学生の半数以上※が留学生だそうです。

(※私が勤める会社の同大学出身の20代半ばの同僚や複数のインターン=現役学生に聞いた話)

 

分野、学部、学科によってはかなりの人数がインドや中国から留学をしにきており、そのままスウェーデンで就職をする人も沢山います。

 

私は仕事で何度もボルボの研究開発拠点に訪問してきましたが、中華系、インド系の人達がすごーく沢山働いていることに驚きました。

 

実際に私と一緒に仕事をするボルボの人もインドの人ですし、その関連で今までインド人には4〜5人会ってきました。

(彼らは超優秀。)

 

こういったお国の事情を抱えているところに日本人が飛び込むとかなり目立つわけです。

私の場合、100%の確率で中国人と間違えられますが、そこで実は

 

「日本から来たんだよ。家族も一緒だよ。しかも駐在じゃないぞ〜!」

 

と言うととんでもなく驚かれます。

その時私が相手に必ず聞く質問があります。

 

「私のような永住目的の日本人男性って見たことあります?」

 

この質問は今まで会ってきたスウェーデン人ほぼ全員に聞いてきましたが、答えは今のところ100% "NO"です。

 

それだけ日本人サラリーマンは珍しい存在なのです。増してやホンダで研究開発をやっていたともなると一目置かれてしまいます。

 

ボルボの初対面の人からは

 

「あなたが噂のホンダ出身の日本人ですかー」

 

なんてよく言われます。

 

ちなみに、ドイツではこういう"一目置かれる"感じはしませんでした。

BMW、ベンツ、アウディ、ポルシェのブランドを抱える彼らのプライドは"半端ないって"ということなのだと思っています。

 

「ホンダにいたの?へぇ〜…」

 

BMWにいた頃はドイツ人の同僚からのリアクションはこんなもんでしたね。

 

なのでスウェーデンに来てビックリです。

ご近所さん等、初対面で世間話をしていて私が日本人ということが分かると、

 

「え!そうなの!?ウチはスバルに乗っていてテレビは日立よ!」

 

なんてことをよく言われます。

日本メーカーってマジすげーよって思う瞬間です。

 

で、先人達が築いてくれたこのブランドに超乗っかってるのが私です。

 

 

 

⑤スウェーデン企業が社員を募集するには

スウェーデンの企業が従業員を新たに雇いたい場合、法律(?)で一定期間、EU全体に募集をかけないといけないんです。

これを日本人が見つけて応募しても全然OKです。

但し、企業からすると、スウェーデン国内やEUと比べて手続きが複雑でコストがかかり、仕事開始までの期間も長く、文化が全く異なる人を雇う訳で色々と面倒くさいのです。

この面倒くささを搔き消すだけのインパクトが必要ということです。

 

 

⑥その他のVISA

話をVISAに戻します。

観光ビザでは90日しか滞在できないですし、社会保障も受けられません。風邪を引いて病院に行ったら何万円も請求されるでしょう。

日本人は難民にはなれないですし、スウェーデンに移住しようとなると、前述の通りスウェーデン人と結婚するか専門職の労働許可を得るかのいずれかとなります。


もしくは学生の留学VISAというものがありますが、交換留学制度が整っている大学の学生であれば全く問題がないでしょうが、企業のバックアップもなく、社会人が突然

 

「留学します!VISAくれーぃ!」

 

と言っても、オイオイちょっと待てよ、となるでしょう。

おそらく一定額の貯金などを担保にVISAが降りるものと思われます。スウェーデンの学校の入学資格に加えて、学費プラス現地での生活費を考慮すれば最低でも数百万円の貯蓄がなければ現実的ではありません。

 

 

⑦シューカツは全く通用しない

「自分の力を試してみたい!」

なんて思っている方々、スウェーデンからしたらそんな人に労働許可は出せません。

 

スウェーデン企業からしたら「試される」なんてたまったもんじゃありません。

 

「御社の社風がぁ〜」

 

とかいうのもアウトです。

 

そんなものはどうだってよくて、日本からは高度な専門知識や経験を活かして、確実に貢献できるプロフェッショナルな人材が欲しがられています。

 

プロフェッショナルと言ってもそこまで大袈裟なことではなく、私が知る限り、自動車産業や電機産業などの日本のものづくりに携わる方々であればスウェーデンに限らず世界中どこでも胸を張って活躍できるでしょう。

 

私がホンダにいた頃に先輩に教わった一つ一つのことが、私が現在スウェーデンで楽しく働ける鍵となっています。

(ちなみにホンダではいつも評価は悪くパッとしませんでした…笑笑)

 

以上となります。

但し上記ステップは私の経験をもとに主観的に表現をしたほんの一例にすぎず、これが全てではないことをご承知おきください。

 

■ このブログを書いている人

自己紹介 - スウェーデンに家族と共に移住したエンジニアのブログ

 

 

■ 日系企業・大学によるスウェーデン現地視察・リサーチをお考えの方へ

これまでストックホルムにて講演やインタビュー等数多くのご協力をさせていただきました。

取材等のご相談はお気軽に tomoya.yoshizawa@liv-i.se までご連絡下さい。

(私からの返信が迷惑メールに分類される場合がございますので、メール送信後数日経過しても返信が無い場合は迷惑メールやスパム、Junkフォルダ等をご確認下さい)

 

ご協力の一例

日本テレビに出演し、スウェーデンのキャッシュレス社会について解説しました | LIV INNOVATION

【活動報告】川崎重工様のスウェーデン視察をサポートしました | LIV INNOVATION

【活動報告】NTTデータ経営研究所様より「キャッシュレス社会」について取材を受けました | LIV INNOVATION

【活動報告】中部経済同友会様に「スウェーデンの労働環境とその実態」のレクチャーを行いました | LIV INNOVATION

 

 

■スウェーデン移住にご興味があるお方 

お問合せはこちらをご覧になってからどうぞ。

〜本ブログについて〜 - スウェーデンに家族と共に移住したエンジニアのブログ

 

 

あなたのスウェーデンへの移住を実現させます

LIV INNOVATION