スウェーデンに家族と共に移住したエンジニアのブログ

娘の教育と妻のキャリアの為にスウェーデンへ移住。

海外企業へ転職する為の具体的かつ現実的な5つのステップ ②文化 前編

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②文化 前編

 

日本にいる時によく耳にしたのが「英語ができればもっと違う人生だったのになぁ」というフレーズです。確かに他の言語が話せれば違う人生を歩むきっかけにはなると思いますが、もちろんそれが全てではありません。仮に、海外で仕事をしたいのであれば、もちろん英語もしくはその国の言葉が話せることやそれまでの専門知識・キャリアが重要となってきますが、それ以上に大切なものはその国の文化を尊重できるかどうかです。

 

この点は海外企業へ転職する、もしくは移住する上で最も重要なところとなってきます。移住してみたものの、こんなはずじゃなかった!とならない為に、前編と後編の2回に分けてお伝えします。

 

インフラやサービス業の完成度、日本は極めて高いがスウェーデンは70%ぐらい!?

日本の鉄道や新幹線はきっちり定刻に発着し、停車位置も一発でバッチリ決めますよね。これが外国では当たり前ではないというのは日本にいてもよく聞く話かと思います。

日本ではレストランや居酒屋でオーダーする時も、店員さんが後に復唱してくれて間違いがないかを確認してもらえますよね。結果、希望通りの飲み物や料理がきちんと届きます。外国だとオーダーの復唱はそこまで一般的ではないですし、頼んだものと違うものが運ばれてくることもけっこうあります。

こうしたことから見えてくるのは、日本のサービス業の質の高さです。我々日本が誇れる文化だと思います。ただ、言い方を変えれば、我々日本人は日本社会に対してある種の完璧さを無意識のうちに追求しているのです。こうした環境が当たり前のこととして育ってきた日本人が外国へ行くと不便さを感じてしまいます。

スウェーデンでは電車が定刻に来ないかもしれない、頼んだ料理と違うものがくるかもしれない、でもそれが当たり前とは言いませんが、許容できる社会となっているんです。ですから電車が遅れても、違う料理が来ても日本人のように騒ぎ立てることはありません。

先日、車のウィンカーが勝手に作動するので車屋で修理をお願いしたら、2ヶ月後ならできると言われました。何故そんなにかかるのかと聞いたら、部品の在庫は手元にあるけれど、メカニックが予約でいっぱいだからだそうです。なので2ヶ月もの間、勝手に右のウィンカーが点いては消してを繰り返してました。後続車がいたりする場合は仕方なしに右折しました。まるでMr.ビーンです。

日本では考えられない話だと思います。2ヶ月も待たせて大切なお客様を逃がして良いのか!的な考え方で、残業してでも修理しよう!となると思います。依頼する側からしたら快適な話ですが、受ける側からしたら残業しないといけなくなるので個人の自由は削られてしまいます。日本では"お客様至上主義"が蔓延していて、残業をしてでもこういった売上を確保するのが当たり前となっているのが実情だと思います。

社会とは複雑なもので、仕事においてもプライベートにおいても、各個人が、時に依頼する側となり、時に受ける側となるわけで、社会全体が「私もやってるんだからあなたもやりますよね」という雰囲気を感じます。

非常に端的な表現ですが、スウェーデンでは日本とは逆で「私も早く帰りたいからあなたも早く帰りなよ」という社会だということです。彼らはとてもリラックスしています。

どちらの社会にも一長一短があります。

つまり、スウェーデンは、日本と比べて社会インフラの完成度は低いと表現できるでしょう。ですが、その分個人の自由が尊重されています。自分だけ残業無しで早く帰って、でもウィンカーの修理は今すぐやって欲しい、というのは、自分と社会との間でGive and takeが成立していないのです。

ですから、一人ひとりが社会の不便さを受入れることで個人の自由を確保する文化なのです。なのでスウェーデンでは24時間営業のサービス業はほとんどありません。ガソリンスタンドに併設されているコンビニのようなものだけです。日曜日はスーパーマーケット以外はどこもかしこも営業していません。土曜日も短縮営業が一般的です。

例えば車のディーラーは、月曜から金曜は9:00-18:00の営業で、土曜は11:00-15:00しか営業していません。しかも営業マンが一人しかいないのでちょっとした商談と試乗ぐらいしかできません。実際にウィンカーの修理依頼を土曜に行ったのですが、「あー、俺メカニックじゃないからまた月曜に来てちょーだい」で終わりです。で、日曜はお休み。

なので、飲食業は別ですが、サービス業であってもほとんどのお店は土日休みが当たり前で、たまに輪番で土曜出勤があるといったイメージです。

ところが、スウェーデンでも部分的に完璧を追求するところもあります。例えば保育に関して。スウェーデンでは未就学児童を就学前学校(日本で言う幼稚園と保育園を合体させた所)に預けるのですが、待機児童が発生した場合は4ヶ月以内に行政が必ず何らかの解決策を見つけないといけない法律が存在します。日本のように、育児と仕事のバランスが取れずに、やむを得ず退職する母親はまず存在しません。

ひとえにスウェーデン社会と言っても、ハード=インフラは”まぁこんなんでいいっしょ”という感じですが、ソフト=保育、医療等は完璧を目指していると感じます。緩いところはユルユルですが、締めるところはしっかり締めている印象です。対して日本は一つも緩いところがあってはならない雰囲気な気がします。

私も、移住当初はインフラの部分で不便さを感じていましたが、私自身個人や家族の自由を優先していますし、会社もそれを認め、社会全体が個人の自由を保証しています。この考え方が社会、国全体に根付いているので、この部分を理解できないのであれば長い間生活するのは不可能でしょう。スウェーデンの税率が高いのは有名な話ですが、リターンが大きいので私は納得して納税できています。

つまり・・・

・日本=個人の自由を犠牲にしてでも社会の完璧さを追及

・スウェーデン=インフラ・ハード面ではある程度妥協。保育などのソフト面では完璧を追及。

ということです。

 

他人の自由を尊重するのは職場でも同じ

そしてこの考え方は職場でも同じです。日本では自分が送ったメールに対して、必ずと言っていいほど返信があったと記憶していますが、ここスウェーデンではなかなか返信は来ません。もはやメールを出して、返事が来たらラッキーだとも思っています。仕方がありません。みんな早く帰って家族と過ごすために、仕事の優先順位を決めて取り組んでいるわけですから、届いたメールの価値の高さに応じて、返信までの時間も変わってくるのだと思います。

なので、メールの出し方も日本にいた頃とは大きく異なります。私は、質問で終わるメールはなるべく書かないように心がけています。質問をしてしまうと、相手は返信という手間が発生してしまうからです。「○○するけどダメだったら△△までに言って下さいね」と書いてしまい、

資料を添付するのであればPDFで容量は軽くし、WI-FIが無い環境でもスマホで簡単に開け、かつ文字も極力排除します。そして△△の日までに返事が来なかったら相手は了承したとみなし、自分の好きなように次のステップへ進みます。相手を気遣い、相手の時間を奪わないように心がけることが大切です。また、こうすることで”無視された”と感じなくて済みます。

上司と部下の関係も日本とは全く違います。私と上司は、互いの家を家族含めて行ったり来たりしますし、とても距離が近く感じます。かといって毎日の出来事を事細かに報告することもありません。上司から全面的に信頼されている実感があり、よほど困ったときか、特大ホームランが打てた時ぐらいしかわざわざ話かけにもいきません。上司は私の百倍忙しいでしょうし、それでも平社員と同じ時間しか会社にいません。仕事を家に持ち帰ることはしませんし、休暇も平社員と同じようにガッツリ取ります(夏休みで5週間とか・・・)。ですから部下である私は上司の時間を尊重すべく、メールでむやみやたらにccに入れたりしません。

 

出世

出世についてですが、私が感じたスウェーデンと日本の大きな違いの一つは、スウェーデンでは出世したい人がそんなに多くいないように感じます。今の収入、暮らしで満足ができているようで、自分の趣味や家族との時間を食われたくないと考えているようです。私の同僚では、平社員でも別荘やクルーザーを持っているのも珍しくありません。ですが、これはエンジニアに限った話です。エンジニアは医者・弁護士ほどではないですが、高給取りで、みんな大きな家に住み、良い車に乗っている印象です。スウェーデンでは勤続年数やと勤めている会社よりも、職業で給料が決まるイメージです。エンジニアになるのは決して楽ではありません。大半のエンジニアは工科大学で修士号を取っています。博士号も珍しくありません。この点においては真の”学歴社会"と言えます。日本では、まぁ何というか"学校歴社会"ですよね。私も日本企業に勤めている時は、色々な人から「キミはどの大学を出たんだね?」と聞かれました。たまたま同じ大学出身の人に出会うと、少しだけ特別な先輩・後輩関係が出来上がり、たいていの場合はそれは有利に働くことが多いと思います。ですが、スウェーデンでは先輩・後輩のような上下関係はないですし、いつ、どこの大学を出たのかを細かく問いただすこともありません。それよりも、どんな分野をどれだけ学び、何の学位を持っているかに興味があるようです。

課長、部長、役員級の人事も、社内からの生え抜きも存在しますが、外部からマネジメントのスペシャリストとしていきなり入ってくるのも一般的です。対して日本では、業界にもよるのでしょうが、社内では全員が全員出世を目指さないといけない雰囲気に包まれており、主要ポストはみんな生え抜きですよね。それが良いか悪いかという話ではなく、違いを認識しておくことが大事です。

  

まとめ

・インフラやサービス業の不便さを受け入れ、個人の自由を楽しもう

・相手の自由を尊重しよう

・海外企業でモーレツ社員をやってもただのクレイジーなやつ

・出世だけが全てではない

 

本日はこの辺で。

 

後編では、「社員と企業、企業と社会の関係性」について書きます。

退職金は出ないの?

不倫がバレてもクビにはならない!?

飲酒運転で捕まってもクビにはならない!?

おいおい、そんなの理解できないよー!という内容を予定しています。


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