芝刈りしました。今年は冷夏なので芝生が全然伸びない…
本題に入る前に、ここでは国際結婚や留学等ではなく、日本で社会人経験があるサラリーマンが外国企業と雇用契約を結んだうえで、労働許可を得てから現地へ引越す事を海外移住と定義します。
またまた本題に入る前の大前提と言うか、一般的で当たり前な事をそれっぽく書いておきます。人を採用する上で、採用する側はやはり年齢は気になります。もっと言うと社会人経験。もっと言うとこれから戦力となるのか否かです。というかそれに尽きます。
ところで、年代別に期待されているものは以下の通り(だと私は思っています)。
20代・・・可能性に賭けて採用する。頭が良く、人付き合いも上手な人が良い。
30代・・・可能性に賭ける部分もあるが、実績も期待したい。
40代以降・・・実績重視。どの分野でならどの程度活躍できるのか。
もちろん例外はありますが、上記に異論を唱える人はごく僅かでしょう。
では、海外ではどうなんのか。海外と言うとあまりにも広すぎるのでここから先は私が暮らすスウェーデンを例に話を進めます。
スウェーデン企業がスウェーデンで生まれ育った人を採用する場合、同じ言語を話し、同じ文化圏の人を雇うことになるので、リスクはそんなに高くありません。
ところが、スウェーデン企業が日本で生まれ育ち、日本に住んでいる20代をわざわざ雇うでしょうか。異なる言語、文化圏、実績もイマイチというマイナス面を払拭するだけの何か強烈なものが無いと難しいでしょう。加えて日本からの引越し代もそれなりにかかりますし、そもそも日本人がスウェーデンに来て働いたという実績があまりに乏しいので採用する側はやたらと慎重になります。インド人や中国人は当たり前のようにいるので、この点では大きな実績があるのです。採用権限を持っているインド人、中国人も沢山います。母国から人を雇うのであればほとんど抵抗は無いでしょう。
また、仮に日本人が雇われたとしても、会社にとってはその後が面倒くさいのです。言葉、文化だけでなく習慣、税制などあらゆる面で日本とは異なりますし、各種手続きで時間をかなり取られます。それを採用された本人一人がスウェーデン語で全て行えるはずがなく、会社としてわざわざサポートをしてあげないといけないわけです。
というわけで、はっきり言って日本人を雇うのはマイナス面しか存在しないのです。
過去にスウェーデンで20代の日本人で労働許可を得て暮らしている人に会ったことがありますが、やはりかなり尖った経歴の持ち主でした。つまりスウェーデンでは存在しない人材だったのです。
では逆に40代以降ではどうでしょう。完全に実績重視となります。スウェーデンだって年齢(というより社会人・業界経験)とある程度比例して給与も増えるので、40代以降の採用は20代と比べてコストがかかります。実績はあったとしても、やはり言葉や文化の違いや、その他前述のマイナス面をは懸念視されて同然です。また、リーダーと名の付くポジションや管理職であればなおのこと、異なる文化圏で人の上に立つのは簡単ではありません。
日本企業がとあるスウェーデン企業を買収し、そこに出向という形で働くのであればみなさん言うことを聞くでしょうが、現地採用となるとそういった後ろ盾もありません。駐在員とは訳が違うんです。
というわけで40代以降は、言葉や文化圏の違いの懸念を払しょくできるだけのCVやCover Letterの書き方、LinkedInのプロフィールの書き方、面接での受け答えが必要となってきます。
つまり最もチャンスがあるのは30代です。
ここから本題です。実は最初から30代に向けて書いています。
書類や面接で頭の良さが伝わり、それなりの実績があれば、後は働きながら異国の言葉と文化に慣れてくれるだろうと言う期待を持ってもらうことは不可能ではありません。現に私がこれを実現させたわけですから。私の周りの在スウェーデン邦人エンジニアは大半が30代です。ちなみにこれらの方々は日本の有名な一部上場企業で研究開発や生産技術等に携わってきた人たちです。
逆に言うと、これぐらいのインパクトのある経歴でないと、少なくともスウェーデンから労働許可を得るのは難しいでしょう。聞いた事もない日本企業からわざわざ人を雇う必要性があるのか、採用する側の気持ちになってみれば当然のことです。
また、これぐらいの経歴がないと、まともな給与ももらえません。たいていの30代は結婚し、子供もいますから、共働きが当たり前のスウェーデンでは、しばらくの間シングルインカムで暮らしていかないといけません。自分と配偶者、そして子供が不自由なく暮らせるだけの収入を、シングルインカムで得るにはそれなりの収入が必要です。
そして、配偶者は必死でスウェーデン語を学び、現地で職を得ない限り、例えば銀行は住宅ローンの融資はしてくれませんし、仮にOKが出たとしてもシングルインカムがベースの審査となっているので、借入額が限られたりします。現に我々がそうでした。妻が正社員となるまでは狭い集合住宅に住んでいました。ちなみにスウェーデンの賃貸住宅事情はとんでもないことになっています。詳細は割愛しますが、家族持ちであれば家は買うべきです。安住の地とならないからです。
ここからが最も重要な点です。そしてここが何故かジャパニーズサラリーマンにとって盲点なのです。それは子供の人生です。30代であれば生まれたばかりの赤ちゃんから小学校高学年ぐらいの子供がいることは珍しくありません。
子供の年齢がいくつであっても、海外移住はその子の人生を大きく左右します。180度異なる人生を強制するわけです。いつか子供が大きくなった時に、何故日本を離れたのかを説明するタイミングが必ず訪れます。その際にまともな説明ができないとなると、それは親として失格です。無責任過ぎます。
子供が自身の人生で壁に当たった際に、親がこんな国に私を連れて来たからだと言うようになり、親のせいにして生きる癖がつく可能性さえあります。海外移住は子供の人生を狂わせるだけの可能性を十分に秘めています。
子供に友達ができる3歳、4歳以降に遠く離れた海外に引っ越すのは、見方を変えればあまりに親の勝手な押し付けなのです。子供から友達を奪う権利などあってはならないのです。昭和であればサラリーマンの転勤など、社会通念上「そういうものだから」で済んできましたが、自らが決断した海外移住となるとそんな言い訳も通用しません。海外では昭和や平成は存在しないのです。
海外移住を考えている方へ、以下まとめです。
1 そもそも海外移住を考えられるだけのスペックですか?
海外移住は移住先の国がビザ(労働許可)を発行しないと始まりません。誰にでもこのビザは出ません。選ばれしものにしか与えられない特権です。東京から埼玉に引っ越すのとは違います。本人の意志だけではどうにもなりません。移住先の国が許可を出さないと働けないし住めないのです。
2 配偶者は移住先でどう生きていきますか?
一家が何とか暮らせるだけの収入の仕事得られたとして、本人は初日から正社員として楽しく働けるでしょう。ですが配偶者の未来は誰も保証してくれません。特殊な経歴が無ければ難民と語学学校に通うところから始まり、高等教育を受けるのか、それとも移民や難民が就くような仕事を選ぶのか。
英語が話せたってスウェーデンではみんな英語が話せてしまうので、やはり尖ったスキルが無いと美味しい職には就けないでしょう。とにかく夫婦共働きで両方正社員でないと、ただでさえ移民なのでクレジットの履歴が無くローンの審査は通りにくいので、家の購入はかなり厳しくなります。それかずっと狭い家に住むか。スウェーデンの場合、賃貸を扱う不動産屋が存在しない程、賃貸は一般的でありません。
何より、働いて納税をしていないと社会から相手にされませんし、友達もできません。働けるようになるまでは、将来働けるようになりたいという意思を見せ、何に向かってどんな努力をしているのかを伝えられないとこの国では「痛い人」となり、陰で色々と言われてしまうでしょう。社会から浮いた存在となり、各ソーシャルメディアで愚痴を吐き、目も当てられない人となります。
3 子供の事、考えていますか?
親のキャリアなんて子供にとってはさほど重要ではありません。親が仮に海外移住を決断した際には、子供の日本にいるお友達やその他自分を形成してきたアイデンティティを強制的に全てぶっ壊すことになります。望んでもないのに新天地でゼロスタートです。いくらWi-Fiがあったって時差がかなりあるので、結局まともに連絡を取り合う事は難しくなってきます。子供にとってどんな説明をしますか?子供は大人の所有物ではありません。
「スウェーデンに移住したいんですけどぉ~」とご相談をいただくのですが、大半の人が上記1,2,3がすっぽ抜けています。配偶者の事も子供の事も一切触れずに自分のキャリアの話しかしない人がほとんどです。海外移住とは、そういった昭和型の転勤ではない事に気付きましょう。
海外企業で働く本人、配偶者、子供、家族の全てが納得し、何故異国へ移住するのかをそれぞれが明確な目標や意義を語れないと、その後の海外生活を乗り越えることも不可能です。幼い子供にこんなことを考えさせるのは不可能なので、親が子どもにとってもベストな選択であると信じ、やがて大人になった時に説明できるようにしておかないといけません。そうでないと子供に対しての裏切り行為ですし、あまりにも無責任です。
最後に
今、これを読んでなるほど~!と思ってしまった方、悪い事は言いません。諦めましょう。こんなことは他人に言われて気付くことではないんです。スウェーデンを始め、他の欧州諸国とは考え方がまるで異なります。日本で大人しく生きましょう。
それか、お勧めはまずは外資系企業に転職することです。同僚や上司がみんな非日本文化の人達に囲まれ、自分の中の当たり前を一旦ゼロにすることが必要です。
日本とスウェーデンが180度異なる社会だとすれば、日本で外資系企業に勤めるのは90度異なるというイメージです。私もこのパターンでした。ホンダの後にBMW Japanを挟み、ドイツ人の同僚の生活ぶりを目の当たりにしたので、後のスウェーデン企業からの採用に繋がったことは間違いありません。
ではでは。