おはようございます。
ストックホルムへ家族で移住し、現地企業で働く35歳、一児の父親です。
本日はスウェーデンと日本での"転勤"の違いと、そこから見える従業員と会社の関係について書いてみました。
◾︎スウェーデンと日本の"転勤"の違い
スウェーデンで転勤はあるのか。
ええ、もちろんあります。
ですが、会社からの一方的な命令を渋々承諾するということはありえません。
仮にそのような状況となった場合(そもそも労働組合の規定や法律上不可能なはず)は、従業員は辞めていくか裁判沙汰にでもなるでしょう。
そもそも、スウェーデン人は自分が住む場所として選んだ土地で仕事を見つけるのが一般的です。
また、専業主婦が2%しか存在しない国ですので、当然、配偶者やパートナーも同じ土地で仕事をしています。
ですから彼ら配偶者やパートナーもそう簡単に仕事を辞めるわけにはいきません。
また、子供がいれば彼らの学校のことも考えないといけません。
(私自身、4歳、12歳、14歳と転校を経験し、負担は決して小さくありませんでした)
こうした課題を解決できるのであれば転勤ということもあり得るでしょう。
例えば、たまたま転勤先が自分の故郷だとか。
海外駐在であれば家族含めて元々興味があった国だとか…
日本と大きく異なるのは、ある日上司から肩をポンポンと叩かれて
「キミ、◯◯支社へ行ってくれないか」
(断る=出世できなくなる)
というのが無いところです。
(少なくとも私の会社では)
ではスウェーデンの支社で人材が必要となった場合はどうするのでしょう。
私の会社ですと、社内もしくは社外で募集することとなります。
"◯◯支社で△△職を募集"
といった具合に募集内容がオープンになり、詳細な条件が書かれています。
例えば勤務地とか業務内容とか。
そこに年齢制限などは一切ありません。
つまり、誰がその仕事をやっても同じ給料となります(基本的に)。
スウェーデンだけでなく、欧州各国では職務給といって、その仕事そのものに対価が支払われます。
入社数年目の社員でも、その道何十年のベテランがやろうと対価は変わらないのです。
但し、ベテランがその仕事をやることで会社に更なる利益をもたらすのであれば、その分の追加報酬があっても不思議ではありません。
話を転勤に戻すと、駐在にせよ転勤にせよ、従業員だけでなく家族が会社と合意できるのであれば問題はありません。
日本と大きく異なるのは、従業員側に会社からの転勤の打診を断る権利があることです。
また、断ったからといって、出世ができなくなるとか居心地が悪くなるようなことはありません。
従業員は会社の利益に貢献するのは当然のことですが、それよりも自分の好きな土地に住む権利が保証されています。
会社側はこれを尊重しないといけません。
ですので、私が日本にいたときによく聞いた
「家を買うと駐在や転勤になる」
ということはこちらではまずありません。
会社都合で、買ったばかりの家を手離すことになったら裁判沙汰となるでしょう。
◾︎そうは言っても…
もちろん、「そうは言っても」という時もあるでしょう。
スウェーデンの会社であっても、"どうしてもこの人にこの支社に行ってもらいたい!"ということもあるはずです。
その場合の従業員は、給料を含め、その他諸々を交渉できます。
スウェーデンでは従業員の会社に対する依存度は日本ほど高くなく、会社側が理不尽な要求をすれば従業員は辞めてしまいます。
退職金も存在しませんし、中途採用であっても出世競争の最後尾に並ぶ必要もないからです。
従って、優秀な従業員ほど、雑に扱えば辞められてしまうので、交渉は慎重かつ丁寧に行われます。
◾︎日本社会へ提案
日本とスウェーデンを単純に比較しただけですとあまり生産性を感じないので、私なりの提案を書いておきます。
1. 退職金と終身雇用を廃止するべき
日本で一般的となっている、"退職金と終身雇用を担保に転勤やその他諸々を受け入れる風土"は、憲法にも書いてある「職業選択の自由」を奪っていると思います。
現に私が31歳の時に初めての転職を考えた時は、相談する人から毎度毎度、
「退職金が減っちゃうよ?」
と言われました。
31歳であればまだまだ他の会社や異なる職種で十分にチャレンジが可能な年齢です。
なのに、30年も先の退職金のことを心配して転職を思いとどまるのは非常にもったいないと思います。
31歳にとって必要なことは、30年先の退職金よりも、今日明日の未来を切り開く為の希望を持てることであり、それを許容できる社会基盤が重要です。
(実際、転職をすることでどれだけ退職金が減るのかは私もよく分かっていませんが、転職を躊躇する理由の一つになったのは間違いない)
2. 年功序列ではなく職務給とする
退職金制度が無くなるだけでは不十分です。
前述の職務給を基本とし、できる人ができることをやる、そこに年齢や性別、国籍は関係無いというのが先進国のスタンダードです。
そして優秀な人材を外国からも受け入れ、終身雇用や年功序列ではなく、適材適所で人事を考えることで多様な価値観を産み出すことができます。
まとめ
日本では昨今、残業時間の削減やプレミアムフライデーなどが話題となっていますが、これらは表面的な部分に過ぎません。
従業員や家族、更には社会全体の風通しが良くなる為には根本的なところを見直すべきです。
それが「会社と従業員の関係」だと私は確信しております。
会社から納得のいかない扱いを受けたらすぐに辞められる社会とするべきです。
ムカついたら辞めればいいんです。
まずは、それが可能となる社会を作るべきです。
誰でも何度でもチャレンジができる社会とするべきです。
今こそ労働組合が声を上げるべき時なのではないでしょうか。
あの巨大組織なら何かできそうですが…
スウェーデンと日本の"会社と従業員の関係"の違いは過去記事でも触れています。
「転職と転社」
http://sverigeyoshi.hatenablog.com/entry/2016/11/08/030034
「海外企業へ転職する為の具体的かつ現実的な5つのステップ ②文化 後編」
http://sverigeyoshi.hatenablog.com/entry/2016/09/21/044930
最後に、近所の寿司屋(中国人経営)の写真。
ここはなかなか美味しい。特にサーモンは最高!
ではでは、また明日。